コロナ禍で、テレワークが主流になり、自分自身の働き方について、改めて見つめ直した人も多いのではないだろうか。
近年、完全在宅で働くことのできる、ライターを希望する人も増えているという。
今回は、ライター歴20年のかさこさんに、取材ライターの魅力や、これからのライターの稼ぎ方について話を聞いてみた。
もくじ
脱線も多いし、原稿には使えないことも多いけれど、人から話を聞くことが楽しい
「僕は結局、取材して書くか、ネットで情報を調べて書くか、どちらが楽しいかと聞かれたら、断然取材なんですよね」
柔和な笑顔で、面白い人に出会えることの魅力について語り出すかさこさん。
取材ライターの仕事には、
①雑誌や本のような、いわゆる読者がお金を払らう純粋な読み物
②会報誌や会員誌のような、有料会員からお金を集めて毎月発行する冊子。雑誌のPR記事のような、宣伝のための広告
大きく分けると、この2種類がある。
かさこさんは、後者の広告からスタート。編集プロダクション3社でキャリアを重ね、フリーライターとして独立を果たした。
例えば、
・季節ごとの企画ものの本
・一般書籍のゴーストライティング
・旅行雑誌『るるぶ』のような読み物
・中小企業経営者・金融機関・税理士チェーン向けの各会報誌
・日経ビジネス・日経マネー・週刊ダイヤモンドなどの、雑誌の中にある記事広告
など、幅広い媒体で、数多くの記事を執筆している。
そんな中でも、中小企業の社長への取材は、ゆうに100人を超える。
特に印象に残っているのは、インタビュー経験が全くなかった頃に行った、TBSのニュースキャスター・筑紫哲也さん(当時)への取材。
テーマが決まっていて、質問事項がしっかりとさえしていたら「話し手次第で取材の良し悪しは決まってくる」と、かさこさんは語る。
取材に慣れている有名人に関しては、緊張はするものの、インタビューする側としてはラクに感じるのだという。
と、いうのも、仮に漠然とした質問を投げかけたとしても「こういうことを言ったら、こんな風に記事にしてもらえるよね」と、インタビュー記事に使える素材としての情報を、きちんと提供してくれるからだ。
もはや、”有名人に対するインタビューは、形式的に行う儀式”と言ってもいい。
通常、有名人は忙しいため、予定よりも取材時間が短くなることが多いもの。
とはいえ、事前に取材対象者の著書を読んだり、別の取材記事・過去の発言などを確認したり、これまで世に出ている情報を元に、後で記事に書き起こすこともできる。
著作権の問題で、別の取材記事の写真を使用することはできないため、有名人への取材は、写真撮影のための時間とも言えるかもしれない。
苦労するのは一般人、特に求人のためのインタビューである。
企業が次年度の新卒募集のために、入社1年目の新入社員から、仕事の様子についてのインタビューを行うのだが…取材に慣れておらず、うまくしゃべることができない人も。
むしろ、大した実績がない状態でインタビューを受けなければいけない新入社員に対して、気の毒に感じることもある。
1つの話題から少しずつふくらませていき、何とかして1記事に仕上げる作業は、とても過酷な時間だという。
骨を折ったのは、新入社員だけではない。
「会社経営者へのインタビューも本当に大変だった」と、かさこさんは苦労話を語ってくれた。
なぜなら、会社経営者はとにかく、しゃべることが大好きだからだ。
新商品についてインタビューしているはずなのに「最近これにハマっててさぁ。そうだ、かさこ君はゴルフやる?」など話がやたら脱線するのである。
こうなると、言葉は悪くなるが、自慢話もある程度は我慢して聞く必要が出てくる。
少しでも間が空いたら「そういえば、こっちはどうなんですか?」と、すかさずカットインして話を元に戻す。
とはいえ、残念ながら間は空かないもの。
「間が空いた! 今がチャンス!」と思ったのも束の間、結局また脱線して違う話…なんてことはザラにあると、かさこさんは苦笑する。
こんな苦労はあるものの、こういったハプニングに取材の醍醐味が詰まっていると、かさこさんは話してくれた。
消費者金融で働くも、夢を求めてライターに転身
学生時代、あちこち海外に行って取材するトラベルライターに強い憧れがあったかさこさん。
旅行関係のプロダクションに入ろうとしたものの、就職氷河期によって、その夢は儚くついえた。
仕方なく、サラ金(消費者金融)に就職するのだが「やっぱりトラベルライターになることをあきらめきれない!」と25歳で転職を決意。
潜り込んだのは、クレジットカードの会報誌を発行する会社だった。
リボやキャッシングなど金融機関での知識があったことで、ライティング未経験にも関わらず、編集プロダクションで働けることに。
安い給料で徹夜をしたり、正直苦労したことも多かった。
それでも、ライティングや編集を学べたことは、お金に代えられない貴重な経験だったと、かさこさんの輝く目が語っている。
その後、キャリアを積むために転職。旅行雑誌『るるぶ』の編集に関わることに。
ついに、念願だったトラベルライターとして、念願だった海外で取材する夢が叶ったのだ。
インターネットで検索すれば簡単に情報が手に入る現在の情報化社会と違って、当時は情報を入手するための手段といえば紙だった。
特に印象に残っているのは、プレスツアー。
地元の魅力を知ってもらうために、観光局がメディア関係者を招待する、1週間から10日ほどの取材旅行である。
観光局が全てアテンドを行うため、ビジネスクラスで移動し、高級ホテルに宿泊し、美味しい料理に舌鼓。
何より、いろんなメディアの人と話ができたことは、忘れられない経験となったそうだ。
また編集プロダクションでは、記事の執筆だけでなく、初めて編集の仕事に携わることとなった。
編集とは、もちろん面白い仕事ではあるが「結局、雑用全部やる」というイメージを持ってほしい。
例えば、1つの会報誌を作る場合。
・次号の企画を立てる
・誰をどの順番でインタビューをするのかを考え、アポイントを取る
・自分自身が社長のインタビューに行くこともあるが、ライターが行く場合も多いため、スケジュールを調整する
・ライターから上がってきた原稿をチェックし、取材先に確認を依頼する
・カメラマンから届いた大量の写真とにらめっこしながら「どの写真を使う?」「大きさは?」「見出しは?」とラフを考える
・ラフに基づいてデザイナーを手配し、レイアウトを考える
・文章の校正をライターに依頼し、印刷の手配をする
・インタビュイーから「この部分は使わないでほしい」など修正依頼が入ると、その分の文字数が減ってしまうので、再度ライターと打ち合わせをする
いかがだろうか?
編集と聞くと、ライターやカメラマンと一緒に「あれがいい」「これがいい」と企画を練るカッコいいイメージをお持ちの方も多いかもしれない。
だが、実際の編集の仕事は細かく、面倒な進行管理を一手に引き受けているということが、お分かりいただけただろうか。
かさこさんが、ただライティングを行うだけでなく、カメラマンや企画編集まで一貫して対応できるのは、この編集プロダクションでの勤務経験によるものが大きいのだ。
自衛のために「ところで、原稿料はいくらですか?」と聞くことの大切さ
フリーライターとして仕事をしていると、返信はもちろん入金が遅いクライアントはわんさかいる。
ここで、かさこさんが作成した自己PR冊子がきっかけで仕事をすることになった、新規顧客とのエピソードを教えてくれた。
かさこさんが請求書を提出してから、待てど暮らせど支払いがなかったという。
「担当者はしっかりしていたのに、おかしいな…」
しびれを切らして問い合わせたところ、担当者は今月末には入金するとのこと。
だが、やはり入金がなかった。
「今、確認します」という、担当者からの返事はあったが、いくら何でも遅い…
「はじめての取引先、本当にお金はもらえるのか?」
不安は募るばかり。
担当者に何度伝えても対応する様子がなく、このままではダメだと「社長を出せ!」と直接電話をかける事態に。
この時は、たまたま責任者が電話に出てくれたため、ちゃんと調べてもらえることになった。
せっかく仕事をもらえたからといって、金額を聞かずに仕事を引き受けると、必ずトラブルに巻き込まれるので、これも気を付けるべきだという。
口頭で約束するだけではダメ、必ず記録を残すこと。
後からもめたとしても、仮にメールでやり取りを行っておけば、証拠が残る。
驚くべきことに、長く付き合いのあったクライアントから、いつもと同じ10万円分の仕事をしたにも関わらず、たった2万円しか支払われないというトラブルに巻き込まれたこともあったという。
この経験こそ「仕事を引き受ける前に、必ず金額を確認する」というモットーを、心に誓った出来事なのだ。
Amazon Kindleで電子書籍出版というライターの働き方
とはいえ、かさこさんは現在、ライターとしての活動は最小限にとどめている。
力を入れているのが、すでに200冊以上出版しているAmazon Kindleの電子書籍だ。
その中の1つである、京都の桜を掲載した背景資料写真集を例に、電子書籍の利点を教えてくれた。
まず、紙の書籍で出版された、ベストショットだけが掲載された写真集を思い浮かべてみてほしい。
多くの漫画家が、背景を描くために正面以外の別角度の写真がほしいように「できるだけたくさん写真を見たい」というニーズがあったりする。
そこで、かさこさんが目をつけたのが、電子書籍である。
写真の容量が軽ければ、1冊の電子書籍になんと500枚近くも載せられるのだ。100枚を超えると大ボリュームと言える、紙の写真集にはできない芸当だろう。
何よりも電子書籍は、気軽に出版できるのがウリである。
最低でも8万~10万文字ほど必要な紙の本に対して、電子書籍は1万文字程度と文字量が少なくてすむ。
電子書籍だと、息切れせずサクッと読める理由がお分かりいただけるだろう。
さらに、電子書籍を出版するための難しい設定は一切ないと、かさこさんは言い切っている。
自分の住所や振込先など、たった30分ほどでAmazon Kindleに登録できる。
原稿をWordファイルで作成し、表紙画像をJPEGで用意するだけで、早ければ5時間ほどでAmazonに自分が書いた本が並ぶという。
とはいえ、印税でとてつもない大金持ちになれるかといえば、そんなことはないそう。
印税は70%とはいえ、もともと安価なので大金が入ってくるわけではない。
ただ、電子書籍は自分で簡単に、何冊でも、好きなタイミングで出版できる。
この利点をうまく活用して、出版すれば出版するほど、収入の軸が増え、リスクの分散になるのである。
そして、ライターはクライアントの求める文章を書く必要があるが、電子書籍は「わたしはこういう文章を書きたい!」という人にこそオススメできる。
まさに、ライターとしての新しい稼ぎ方だと言えるだろう。
電子書籍の出版について、さらに詳しく知りたい方はコチラ▼
◆【無料で公開】AmazonKindle電子書籍の出版の仕方4ステップ解説
かさこさんについて
AmazonKindle作家&出版アドバイザー
カメライター(カメラマン×ライター)
好きを仕事にする大人塾『かさこ塾』塾長
なわとびYouTuber
◆インタビュー内で紹介した電子書籍
背景資料集・京都の桜:伏見十石舟、哲学の道、背割堤など
◆Kindle著者ページ
◆2000年から毎日更新しているブログ
◆取材・撮影・執筆・講演依頼はkasakotaka@hotmail.comまで