インタビュー/取材記事

双子を出産したことが人生を変えた。3兄弟の母、佐藤ともこさんに学ぶ、英語力を生かした働き方の選択肢とは

「双子を出産することになるなんて、これっぽっちも思ってなかったよ」と、
笑いながら教えてくれたのは、新潟県新潟市で英語講師として活動する佐藤ともこさん。

21歳の時に実母が他界。
近くに頼れる親戚もおらず、双子を含めた3兄弟を育てながら一般企業に勤めるなんて無理だと、起業する道を選ばれました。

未経験で親子英語サークルを立ち上げた後、講師育成コンサルタントとして起業。
現在は、幼稚園から小学生を対象とした、英語指導に携わっているとのこと。


✔親子英語サークルを立ち上げたい
✔英語力を生かして、英語を使える仕事で働き続けたい
✔助けてくれる人が周りにおらず、産後の働き方が不安


そんな方に、働き方の選択肢の1つとして、15年来の私の友人でもある佐藤ともこさんが、歩まれてきた道をお伝えできればと思います。

もくじ

英語講師 佐藤ともこ(tomo sato)さんについて

2014年生まれの男児、2017年生まれの双子男児、3兄弟の母。

大手英会話スクールに8年間勤務し、小学1年生から70代までの生徒に英会話・英文法などを指導。
新人講師の育成や、講師・スタッフ向けのカウンセリング研修等、英語指導以外のスクール運営にも携わる。

2014年11月、長男が0歳7カ月の時に、兵庫県伊丹市で、未就園児対象の親子英語サークル「おやこえいごHigh Five!」を立ち上げ、4年半運営。
レッスンは常にキャンセル待ちが出るほど好評をいただく。

2019年4月、新潟県新潟市に転居。
同年6月、新潟市西区にて、親子英語サークル「おやこえいごHigh Five!」を再開。
半年もしないうちに、レッスン予約開始5分で満席になる人気レッスンに。
また、子育て中のママ向けに、英語絵本の読み聞かせ方法などをお伝えする「ママHigh Five!」も開始。
コロナ禍で対面レッスンができなくなるまで、新潟市内5ヶ所でレッスンを行う。

現在は、幼稚園での英語講師や出張レッスンなど、依頼限定で活動。
延べ13,000人以上の英語学習者、延べ1,300組以上の親子への指導実績を持つ。
英検準1級、TOEIC970点。

西垣かおり

さっそくですが、いろいろお話を聞かせてください!

もともとは、子ども向けの英会話講師として働いていた訳ではなかったですよね?
英語を教える仕事に進んだきっかけなど、何かあったのですか?

佐藤ともこ

こちらこそ、よろしくお願いします!

独身のときは、派遣で企業の受付として働いていました。
海外からのお客様に対して館内を案内したり、台本を作り直したり……

英語を使ってはいたものの『この職に未来はないな』と思ったんです。

母親が亡くなってから、私が家事を引き受けていたので、当初は無理なく働くのに最適な職場環境でした。
ですが、妹が働きに出るようになると、忙しい中せっかく私が作っておいた晩ご飯を食べてくれなかったり……

西垣かおり

あー、それシバきたくなるやつですねヽ(`Д´)ノプンプン

佐藤ともこ

そうなんよ(笑)

そんな中、この職場で経験を積んだからといって、「私の人生に何のプラスにもならない」ことに気が付いたんです。
せっかくアメリカに留学して、英語力を身につけたのに、こんなに自分のためにならない仕事で終わっていいんかなって悩み始めるように。

家庭教師の経験があったため、「英会話の先生になろう!」とスクールを探し始めました。

大人向けの英会話講師養成講座を見つけて、「これや!」と。
週5日働きながら、土曜日に奈良県の実家から大阪市まで養成講座に通う日々が始まりました。

3カ月後の最終試験が終わってからは、受付の仕事が終わった後に、休んだ先生の代わりに代講授業という形で、2008年10月に講師業をスタートさせます。
そのうち、土曜日に大阪の天王寺でのレッスンを受け持つようになりました。

そこで手ごたえを感じた私は、受付の仕事を辞め、2009年4月からは英会話講師の仕事1本に絞ることを決意します。

仕事はやりがいもあり楽しく、長男のときは臨月まで働きました。
つわりはしんどかったですし、大変なことも多かったのですが、受け持つレッスンを週6日から徐々に週2日程度まで減らして、大きなおなかで車を運転していましたね。

親子英語サークルを立ち上げたきっかけは、自分の子どもと一緒に成長を感じることができると思ったから

佐藤ともこ

長男を妊娠中は、車の中で英語の童謡をかけ流ししていました。
英語の絵本も買い集めて、家にたくさんの英語教材があったので、「せっかくやから、未就園児向けのレッスンをやってみたい!」と思ったんです。

とはいえ当時、長男は0歳。
大人向け英語レッスンの経験はあるものの、未就園児向けは全くの未経験でした。

西垣かおり

これ、聞いたときに驚いたことを覚えています。
人を集めて、レッスンの準備をして、お金をもらって、出席管理をして……を0歳児抱えてやるって、すごすぎると!

佐藤ともこ

結婚後に住んでいた兵庫県伊丹市で、0歳児を持つお母さん向けの集まりがありました。
市が開催している10回講座、というアレです。

この講座が終わったあと、参加者だったお母さんたちと仲良くなり、この集まりがそのまま子育てサークルに進化しました。

そこで、「お試しで英語レッスンをやらせてくれないか?」とお願いしてみました。
「ぜひ、やってほしい!」と周りから言われたことがきっかけとなり、「思い切ってやってみよう!」と腹をくくったのです。

レッスンの情報を、市が発行する子育て世帯向けの案内に掲載してもらいました。
同時にアメブロを始めたのですが、だいたいはアメブロを見た人からの問い合わせでしたね。
月2回と無理のないスケジュールで、家で長男相手にやっていたものをレッスン内容にし、手探りでスタートします。

最初はワンコインから始めて、慣れてきたら2回で1,500円でレッスンを行うように。
長男は抱っこ紐で抱っこ、成長してきたらおんぶしながら、朝から2レッスン。
長期休みは、立派なアシスタントとして、長男は私をサポートしてくれました。

西垣かおり

双子を出産したあともサークルを継続されていましたが、不安はありませんでしたか?

佐藤ともこ

双子を妊娠してサークルはお休みしたのですが、まず復帰できるのか? から悩みました。

さすがに、0歳双子を置いておいてレッスンをする訳にもいかないので、お友達の保育士さんに来てもらうことに。
そのことを考えると値上げを考えないときついなと、最終的に2回で2,500円まで値上げしたのですが、みなさん継続でレッスンを受けてくださって本当にありがたかったですね。

休んだら1回は振り替えができる、みたいなルール作りも試行錯誤の連続です。
他の英語サークルのアメブロやホームページを、とことん調べましたね。

それから、本当にいろんなお母さんたちと出会いました。
「自分がやりたいからぜひレッスンに行かせてほしい!」と言っていたのに、気が付くとフェードアウトしていく。
そのお母さんと、別の子育てサークルで合うと気まずかったり(笑)

市の広報にも掲載してみたものの、それで来てくれた人はすぐ離れていくことに気が付いたんです。
ですが、ブログを読み込んでから来てくれた人は辞めない。
だから、集客をブログに限ろうって、アメブロの更新を頑張りました。

幼児向け英語レッスンの教え方を学んだり、アメブロの講座に通ったりもしましたね。
そのうち、ブログからお客様を集めた方法や、レッスンの準備や台本作り、保護者に対する対応方法を教えてほしいと周りから聞かれるようになり、英語講師に限らずサポートを始めます。

双子が奇跡的に保育園に入れたため、そのまま開業届を出し、講師専門のコンサルタントとして起業しました。
当時は夢中だったので、悩んだこともあったのですが、楽しかったこともたくさんありましたよ。

自分自身の考え方や価値観がガラリと変わった、双子の妊娠

西垣かおり

その後、兵庫県から、ご主人の出身地である新潟県に引っ越しされましたよね。
きっかけは、義実家への里帰り出産だと聞きましたが……?

佐藤ともこ

2回目の妊娠が分かったときに、里帰りせずに産めるよう、長男と一緒に泊まれる病院を伊丹市で探していたのですが。
双子を妊娠していると分かったときは、「どうしよう……」と戸惑いつつも、今後どうすることが家族にとってベストなのか、とにかく調べて考えました。

ハイリスク出産になることもあり、夫の実家に、夫なしで7カ月半、長男と私+おなかの双子だけでお世話になることに。
双子を出産後は、兵庫県伊丹市に戻って、ワンオペで3兄弟の育児を引き受ける生活が待っていました。

当時の記憶はほとんど思い出せないくらい、毎日が慌ただしく過ぎ去っていって……
子どもたちが体調を崩し「入院できますか?」と聞かれるたび、核家族の限界を感じ、子どもたちのためにも、私たち夫婦のためにも、義実家近くに移住することを決断します。

西垣かおり

新潟に引っ越ししてから半年もたたないうちに、新しく新潟で立ち上げた親子英語サークルを満席にされていましたよね。
精力的に活動できたのは、理由があるのですか?

佐藤ともこ

当時の私は、講師向けのコンサルタントとして起業していました。
兵庫県伊丹市での実績はあるものの、新潟県での活動実績はもちろんありません。

新潟県で講師としての経験がないのに、新潟県で「講師向けのコンサルタントをしています!」と言ったとしても説得力がないので、新潟県に行って1年は講師業に集中して、とにかく結果を出そう!
その勢いがあったため、引っ越し前からアメブロ、Instagram、Facebookなど、SNSを活用して準備を進めました。

結果が出なければ、その次の講師向けのコンサルタントの仕事につながらないと当時は思っていたため、突っ走れたのだと思います。

1年間めちゃくちゃ頑張って、英語講師としての結果につながったタイミングでコロナ禍となり、対面の英語レッスンを全て終了することに。
講師向けコンサルタントの仕事に全シフトし、講座作りや教え方の指導など、オンラインでできる働き方を選びました。

起業を軌道に乗せようと必死になるなかで、見落としてしまっていた、自分の本当の気持ちや家族のこと

佐藤ともこ

子どもが熱を出しても仕事ができるからと、ずっとオンラインを活用して仕事をしてきました。

✔アメブロを書けば、人を集めることもできる
✔ありがたいことに、講師サポートの仕事も充実している

ですが、「頑張らなきゃ!」と思って、ここまで必死に頑張っていたけれど、よくよく自分の心の声を聞いてみたら、
【有名になんてなりたくないし、地元でひっそりと生きていたい】と、本当はそう思っている自分に気が付きました。


英語を教える、ということはずっと続けてきました。
レッスンをして、講師として英語を教えることは大好きです。
小さな世界で、生徒さんを大切にしながらレッスンを行うことも大好きです。

ですが、「私、講師です!」って、SNSでバーン!! と、もっともっと発信していきたいのか? と自分自身に問えば、注目を浴びるのが嫌だったことが、SNS発信を繰り返していくうちに分かってきたのです。

きっと、頑張りすぎていたのだと思います。

同時に、子どもたちのことで考えなければならないことが増えました。
一生懸命、起業を軌道に乗せようと、もがいていく中で、私が家族のことをきちんと見ることができていなかった反動が来たのかもしれません。

子どもたちが、今どういう気持ちで生活しているのか、私自身、そこに気を配れていなかったのです。
ワーママの永遠の課題と呼べるのかもしれませんね。

西垣かおり

すごく共感します。私はフルタイムで働き、副業でライターとして活動しているので、時間的な余裕のなさから、気持ちに余裕がなくなることが多々あります。

子どもに対して、怒鳴りつけてしまうこともあれば、学年が上がるごとに別の問題が出てきては対応して……毎日試行錯誤の連続です。

佐藤ともこ

どのような形であれば自分が心地よく働くことができるのかを、真剣に考えました。

今は、「英語を教えてもらえませんか?」と依頼された場所に行って英語を教える、という働き方をしています。

例えば、自分の自宅で英語教室をしたとすると、

・子どもたちへの対応
・受講生を集めること
・保護者への対応
・部屋の掃除

のように、英語を教える以外のことに対しても、全部自分1人で対応しなければなりません。
これが、プレッシャーになっていました。


現在、幼稚園の保育時間内のレッスンで月に1回、幼稚園の保育時間外の希望者対象のレッスンで月に3回、お寺さんで月に2回のように、場所をお借りして出張で子どもたちに英語を教えています。

ちょっと悪いことをする子がいたら、幼稚園に間に入ってもらって、授業終わりに担任の先生と話をしてもらう、みたいに

・しつけを全部1人で担わなくてよい
・問題に1人で対処しなくてよい

英語の授業準備に集中できるこの働き方が、今の私にはちょうどいいと感じています。

子どもたちがもう少し成長したら、こういう感じで教えられる拠点を増やすのもいいかもしれない。
それに、子どもたちの年齢が上がったら、同じ月齢の子たちと一緒に英検の対策講座をやったりするのもいいですね。

いろいろ動いてみて、自分のほどよいところに落ち着くのがすごい大事やな、って実感しました。

起業が全てだとは思いませんし、自分の性質に合うぴったりのところに行きつくために、もがいたな私、って思っています。

今は、肩の力を抜いた充電時間中と呼べるのかもしれません。
今後も家族を大切にしながら、柔軟に働き方を変えていけたらいいなと考えています。